【水系増粘剤】ゾルの配合理由、ゲルの配合理由

化粧品

水系増粘剤

化粧品を処方設計するうえで、水系増粘剤はどのように使用すればいいのでしょうか。また、どういった使い方が多いのでしょうか。今回は水系増粘剤について、とろみのある粘性を与える増粘剤を「ゾル性増粘剤」、そのゾル性増粘剤を使用してできた製剤を「ゾル製剤」と定義し、ぷるっとしたゲル粘性を与える増粘剤を「ゲル性増粘剤」、そしてゲル性増粘剤を使用してできた製剤を「ゲル製剤」と定義します。
ゲルはともかく、ゾルはあまり聞きなれない言葉かもしれません。また、ある物質の性質を表すゲルやゾルという言葉は、「これはゾル」、「それはゲル」と一概に言えるものではありません。これら二つは虹の色のように境目がなく連続している状態ですが、ここではあまり細かく定義せず、とろっとしたものをゾル、ぷるっとしたものをゲルとして話を進めていきます。

化粧品に水系増粘剤を用いる場合、とろっとした性質、ぷるっとした性質、つまりゾルとゲルではどちらがいいのでしょうか。化粧品は特に消費者の趣向によって好き嫌いがありますが、今回は増粘剤の性質から説明していきましょう。

水系増粘剤を使用するメリット

水系増粘剤を化粧品に用いる理由は、製品安定性の向上、使用性の向上、塗布後の機能付与、大きく分けてこの3つ。

製品安定性の向上

まず、製品安定性の向上に向いている水系増粘剤はどちらでしょうか。製品安定性の向上という点だけで見ると、ゾルでもゲルでも製品安定性は向上します。しかしながら、水と水溶性保湿剤以外の成分、つまり、水に溶解しない成分、例えば油性成分や乳化剤、感触改良パウダー、顔料などを化粧品に配合する場合、ゾルよりもゲルの方が圧倒的に製剤安定性は向上します。それはゾルが、水に溶解しない成分が製剤の中で見た目上は止まっているように見えても、実際は製剤の中を自由に動ける状態であるのに対して、ゲル製剤では水に溶解しない成分は、実際に動けない状態、動きにくい状態であるからです。

安定性が向上する状態とは?

一般的に水に溶解しない成分、例えば油性成分は水より比重が軽い成分が多く、顔料は水より重たいものがほとんどです。ですので、ゾル製剤では油性成分は上層に浮かびやすく、顔料成分は下層に沈降しやすくなります。ゾル粘性を与える原料は架橋度合いがゲル粘性を与える原料より低く、原料の配合量を増やしていっても、ゲル製剤にはなりにくく、ゾル製剤からゲル製剤に近くなるころには、化粧品として使えないくらい硬くなってしまいます。
水に溶解しない成分を動けない状態、もしくは動きにくい状態にすれば、製剤安定性を向上させることは理解しやすいかと思います。

架橋度による安定性の変化

では、架橋度合いの高いゲルを配合すれば、どんな製剤も安定性を向上させることができるのでしょうか。架橋度合いが高いゲル製剤、例えば寒天ゲルのような製剤は、硬すぎて手にとりにくいという欠点がうまれたり、また、製剤自体に柔軟性がなくなり、ゲルから一旦出た水が戻れなくなり、離蔣したりします。
水に溶解しない成分を配合する化粧品の場合、水系増粘剤はゲルになって硬くなりすぎないほどほどの架橋度合いのものを選ぶことを推奨します。

ここまでで、ゲル性増粘剤は水に溶解しない成分を配合する際、製剤安定化を向上させることができることが分かりました。また、その際はゾル性増粘剤の配合量を増やしていっても、目的の製剤安定化を向上させることが困難であることも分かりました。

では、ゾル性増粘剤はどういった製剤に配合することが多いのでしょうか。

ゾル性増粘剤の用途とは?

ゾル性増粘剤は水に溶解しない成分を配合する化粧品の製剤安定化を向上させることは不得意としていますが、逆に泡が抜けやすいという性質があります。シャンプーやボディーソープなどの洗い流し製品は、使用前のボトルに入っているときは泡立たないほうがいいのですが、実際に使うときは泡立ってほしい、むしろできるだけ泡立ち続けてほしいものです。
皆さんは、シャボン玉にヒアルロン酸を入れると割れにくくなるのはご存知でしょうか。空気と水と界面活性剤でできた泡に、ヒアルロン酸のような水系増粘剤を配合することにより、泡が割れにくくなるのです。シャンプーやボディーソープなどに、泡質や泡持ちを変えるために水系増粘剤を配合するのと、割れにくいシャボン玉を作るために水系増粘剤を配合するのは、基本的に同じ原理です。ゲル粘性を与える水系増粘剤を配合しても、割れにくいシャボン玉を作ることはできますが、製造する際に、泡立ちやすいシャンプーやボディーソープの泡を抜くのにゲル製剤では困難ですので、あまり推奨されません。
こういった理由から、シャンプーやボディーソープなどに用いる水系増粘剤はゾル性増粘剤が最も推奨されるのです。

このようにして、皆さんが普段使用している製品の有効成分の安定性や使用性は向上され、より使いやすいものが手元に届いているのです。

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  • 日用品
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